Skip to content

NexmonによるCSIベースの人物通過検知システムに関するプロジェクト

Notifications You must be signed in to change notification settings

haradakaito/PassageDetection

Folders and files

NameName
Last commit message
Last commit date

Latest commit

 

History

61 Commits
 
 

Repository files navigation

NexmonによるCSIベースの人物通過検出システムに関する研究

0. はじめに

監視社会としての側面が強まる現代で,個人のプライバシーを尊重したセンシング技術の発展が喫緊の課題である.近年,Wi-Fi電波の通信媒体波及時における,チャネル状態情報(CSI)から振幅・位相情報を分析することで,非接触型人間活動認識(HAR)を行う技術が注目を集めている.
これはカメラベースの手法に比べ,明暗の変化に強く,かつプライバシー侵害が少ない特長がある.また,赤外線ベースの手法よりも温度変化に強く,対象者の移動方向に対する脆弱性も低減している.さらには,センサの装着が不要であるため,対象者のストレスを最小限に抑えられる.今後,多様なデバイスやプラットフォームが普及していく中で,Wi-Fi電波(CSI)の利用は実用面において優れている.
しかし,Wi-Fiチップの大半は,CSIへのアクセスが制限されており,アクセスが可能なハードウェアとソフトウェアは高価であるため,完全なCSIの取得が困難である.
先行研究[1,2]では,オープンソースのCSI収集用ファームウェアパッチであるNexmon[3]を用いて,CSI制限に依存せず,導入コストを抑えたセンシングの可能性を示したが,実現手法やシステムアーキテクチャの性能の検証・評価が十分に実施されているとは言えない.本研究では,NexmonによるCSIベースの人物通過検出システムの実現手法を示し,その性能の検証・評価によって,NexmonによるCSIベースの人物通過検出システムにおける可能性を示す
図_CSIイメージ

1. 人物通過検出手法

NexmonによるCSIベースの人物通過検出システムの実現手法を提案する.提案手法は「データ収集」「信号処理」「学習・評価」の3フェーズから構成される. 「データ収集」フェーズでは,Nexmonを対応Wi-Fiチップを備えたデバイスに適用し,IEEE 802.11n規格以降の無線通信におけるサブキャリアの振幅情報を取得する.
「信号処理」フェーズでは,収集した生のCSIデータに対して前処理を行う.具体的には,未使用サブキャリアを閾値によって除去する.残ったn個のサブキャリアに対して,スライディングウィンドウを作成し,hampelフィルターを適用することでノイズ除去を行う.さらに,differenceフィルターを適用し,トレンド非定常性や,スケールの差異を解消する.
最後に,形状ベースの時系列クラスタリング手法であるk-shapeを用いて,全サブキャリアクラスタ重心を抽出し,代表値として使用することで,計算コスト・過学習を低減する.
具体的には,ラベル平滑化とk-Foldアンサンブル学習により,k個の分類器を構築する.また,全k個の予測値は相加平均で統合され,補正処理により分類器の検出性能を向上させる.
図_学習アーキテクチャ

2. 基礎評価

2.1. データ収集フェーズ

CSI収集用デバイスとしては,安価で入手容易なRaspberryPi4Bを使用した.また,Wi-Fi送受信機としては,IEEE 802.11n/ac規格対応のWi-Fiルーター(WSR-1800AX4P-WH)とラップトップPC(dynabook GX83/MLE)を使用した.通信条件は,送受信機間距離を1.5[m]の距離で屋内に設置し,**2.4[GHz]帯の帯域幅20[MHz]で通信間隔を20[Ping/s]**として通信を行った. 収集条件は,単体の通過を想定し,教師信号は「通過と非通過」の2値とし,通過速度はSlow:約0.5[m/s],Normal:約1.0[m/s],Fast:約2.0[m/s]の3パターンで収集を行った.
図_収集環境

2.2. 信号処理フェーズ

収集したサブキャリア数は64個であり,IEEE 802.11n規格の20[MHz]帯では,内56個が通信に使用されるため,8個の未使用サブキャリアの除去を行った.また,hampelフィルター,およびdifferenceフィルターを適用し,ノイズ除去,トレンド非定常性,スケールの差異を解消した.信号処理フェーズは,非通過区間の分散を抑え,通過区間をより明確にする効果がある.そのため,各処理を適用した際の分散(標準偏差)の変化から,信号処理フェーズの効果を定量的に評価する.
図3に,収集された全3パターンのCSIデータに対して,信号処理フェーズのパイプラインを適用した際の,標準偏差の変化を示す.各サンプルで標準偏差は減少傾向を示し,信号処理フェーズの有効性を確認した.
折れ線グラフ_信号処理パイプライン

2.3. 学習・評価フェーズ

データの前処理後,第2章で示したアーキテクチャ(図1)に基づいて,目的変数をシーケンス内のラベル割合としてソフトな(One-Hotでない)状態で使用した.また,k-Fold(k=3)とし,アンサンブル学習モデルを構築する際の分類器は,複数の時系列モデル(1D-CNN,LSTM,LSTM- FCN,ResNet,Transformer,RandomForest)で試行した.今回は,統合された予測値の補正方法として,誤分類箇所がスパイク状に出現することから,hampelフィルターを使用した.
各学習モデルへの入力時点数を10~30,hampelフィルターのパラメータをt=10~50,α=1.5として試行した際の,F値の分布を示す.分類器:LSTM-FCNで,Accuracy:0.985,F1-score:0.978を,最良の結果として確認した.
箱ひげ図_学習モデル比較

画像1

3. 人物通過検出手法の応用

人物通過検出システムを応用し,人物通過速度分類を行う.これは,通過速度と検出区間幅に、有意な相関が存在するという仮説に基づいている.モデルの予測値から検出区間幅を得る.基礎評価で使用したテストデータ内では,合計23回(Slow:7回,Normal:7回,Fast:9回)の通過区間が存在している.得られた検出区間幅データに対して,k-means法でクラスタリングを行った際の,分類結果を示す.全通過区間で,適切な通過速度分類が可能なことを確認した.

4. 考察

サンプリングレートによる精度変化を調査したところ,下の左のような結果となった.サンプリングレートが増加するごとに検出精度は上昇していき収束していく様子が確認できる.
また,k-Foldアンサンブル学習を行う際のkの値を調査したところ,下の右のような結果となった.kの値が増加していくごとに最大精度と最小精度の差が小さくなっていき,ロバストなモデルとなることが確認できる. 画像5

5. おわりに

NexmonによるCSIベースの人物通過検出システムの実現手法を示し,その性能の検証・評価によって,NexmonによるCSIベースの人物通過検出システムにおける可能性を示した.第3章では,第2章の提案手法を用いて,高精度に人物通過検出を行えることを示した.また,第4章では,検出システムを応用し,通過速度分類が可能なことを示した. 今後の展望としては,さまざまな内外的要因(通過人数や通信条件,環境差など)に対し,より広範な調査を行い,他ドメインへの実用的なシステムとしての運用を検討する.

参考

[1]Shahverdi, H., Nabati, M., Moshiri, F.R., et al.: Enhancing CSI-Based Human Activity Recognition by Edge Detection Techniques, Information, Vol.14.7, No.404, (2023).
[2]Xia, Z. and Chong, S.: WiFi-based indoor passive fall detection for medical Internet of Things. Computers and Electrical Engineering, Vol.109, No.108763, (2023).
[3]Gringoli, F., Schulz, M., Link, J., et al.: Free your CSI: A channel state information extraction platform for modern Wi-Fi chipsets, Proceedings of the 13th International Workshop on Wireless Network Testbeds, Experimental Evaluation & Characterization, pp.21-28 (2019).

業績

[1] "NexmonによるCSIベースの人物通過検出システムに関する研究", 第86回IPSJ全国大会 (2024.3.発表済み).

About

NexmonによるCSIベースの人物通過検知システムに関するプロジェクト

Topics

Resources

Stars

Watchers

Forks

Releases

No releases published

Packages

No packages published